菌な人をご紹介[Winter 2024]

   2025/05/16

世界には私たちが知らない、ふしぎな菌が数多く存在しています。
そんな菌を愛する変形菌ハンターによる、美しい世界をご紹介。

世界は変形菌でいっぱいだ!

若き変形菌研究者・増井真那さんの言葉です。これは決して大袈裟な表現ではありません。今回写真を掲載したハナホネホコリは、直径約1㎜の子嚢の壁が花弁のように開いて黒い球形の塊が見えています。これがすべて胞子です。胞子の直径は約10ミクロン。この塊の中に何個の胞子があるか計算した人がいますが、何と50~100万個でした。小さなフィールドの倒木に1,000個の子実体があれば、胞子は5億~10億個です。日本では? 世界では?と考えると兆とか京という単位も小さすぎるでしょう。

これが偏西風や貿易風に乗って世界中を駆け巡るため、変形菌にはその土地だけの固有種というものはありません。地球の大気中には変形菌の胞子が溢れかえっているのです。

ハナホネホコリ

秋の変形菌ハナホネホコリは、美しい構造色を見せる変形菌のような派手さはないけれども可愛らしい変形菌で、広葉樹の腐木上に発生します。まるで雪見だいふくのような色合いから始まり、淡褐色、チョコボールのようなチョコレート色に変化する、美味しそうな変形菌です。
そして最後には外壁が裂開して反り返り花のような形になるのです。ハナホネホコリという和名は、この姿から名付けられたそうです。クルンとまるまって反り返るポップな感じで、私のお気に入りの変形菌です。子実体の高さは1~3ミリ、変形菌の中では比較的大きいサイズなので肉眼でも見つけやすいですよ。

文章・写真ご提供はこの方

引地 美喜子 さん

十和田奥入瀬・八甲田山麓をフィールドに、早春から晩秋まで変形菌を探して山野をかけ巡る自称変形菌ハンター

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