菌な人をご紹介[Spring 2024]
世界には私たちが知らない、ふしぎな菌が数多く存在しています。
そんな菌を愛する変形菌ハンターによる、美しい世界をご紹介。
変形菌と南方熊楠
知の巨人と言われる南方熊楠は、粘菌(変形菌)の研究でも知られおり、植物学・生態学・哲学などの論文を多数発表しています。昭和天皇に進講したときに110種の粘菌の標本を桐の箱ではなくてキャラメルの箱に入れて献上した話は有名です。また生態系の宝庫・神社の森が神社合祀令で破壊されようとした時には自然保護運動の先頭に立ちました。逮捕後、留置場にいた時に床に変形体をみつけて、釈放されても動かなかったという逸話もあります。彼は動き回る変形体を観察して、「粘菌は動物である」と主張しました。現在、動物・植物でもなく、さらには菌類でもなくアメーバの仲間に分類されたことを知ったら、どんなに驚くことでしょう。この変形菌のルーツの話は次回いたします。
アカフクロホコリ
夏、朽ち木や苔の上などに赤や緋色の変形体を見つけることがあります。鮮やかな色合いなので目に付きやすいのですが、鮮やかさゆえに「ホラーだ」という人までいます。変形菌は成長する過程で色合いや形の変化が見られるものが多いのですが、このアカフクロホコリの鮮やかな色合いは成熟するまで同じです。円筒形や枕型に成熟した姿など相変らずホラー感のあるビジュアルのものもありますが、苔の葉先に苔の実のように付く可愛らしいものや苔の蒴に絡みついて風に戯れているものもいて、目を楽しませてくれるユニークな変形菌です。
文章・写真ご提供はこの方
引地 美喜子 さん
十和田奥入瀬・八甲田山麓をフィールドに、早春から晩秋まで変形菌を探して山野をかけ巡る自称変形菌ハンター