菌な人をご紹介[Summer 2023]
世界には私たちが知らない、ふしぎな菌が数多く存在しています。
そんな菌を愛する変形菌ハンターによる、美しい世界をご紹介。
雌雄の概念を超える変形菌の性
数年前まで、ある種のモジホコリには8つの性があると言われていました。つまりモジホコリの近くに8個の仲間がいれば、7つとは接合できるかもということです。夫の友人は「ハーレム状態だな。羨ましい!」と言っていました。
ところが最近、ある種には数百の性があることがわかってきました。動植物のように出会う確率が高ければ雌雄でいいのでしょう。しかし空を漂って倒木に降り立ち、アメーバとなって偶然の出会いを待つ変形菌です。ようやく見つけた相手が同性だったということを避けるためなのでしょうか。変形菌は一個一個の性が違って当たり前。ヒトだって一人一人違ってもいいですよね。
ホソエノヌカホコリ
春から初夏にかけて、苔の中にルーペなしでも見つけることができる変形菌です。未熟な子実体は朱色や橙色の美しい佇まいで、愛好家の一番人気です。実は見つけやすいのには理由があります。他の変形菌で未熟な美しい姿の期間は1日もありませんが、ホソエノヌカホコリは数日以上もその未熟なゼリー状の姿を保っているのです。その後成熟すると黄土色になった子実体が破裂してアフロヘアのような細網体が現れます。そして再び胞子が世界に飛び立つのです。
文章・写真ご提供はこの方
引地 美喜子 さん
十和田奥入瀬・八甲田山麓をフィールドに、早春から晩秋まで変形菌を探して山野をかけ巡る自称変形菌ハンター