菌な人をご紹介[Winter 2022]
世界には私たちが知らない、ふしぎな菌が数多く存在しています。
そんな菌を愛する変形菌ハンターによる、美しい世界をご紹介。
なぜ変形菌は動き回ることができるの?
変形菌は変形体の時期に、倒木や枯葉の上を活発に移動して細菌やキノコを捕食します。
巨大な単細胞である変形体のなかでは、原形質流動という現象がみられます。
ゾル・ゲル状の原形質の中で、動物の筋収縮と同じようにアクチンとミオシンなどの物質が流れをつくり移動しているのです。
時速1㎝のスピードが出ますから、そこにいたはずの変形体が忽然と姿を消して驚かされるのです。そして機が熟すと子実体というキノコになります。
その時に邪魔になるものがあります。それは運動する時にだけ必須のカルシウムです。
本日のキララホコリは、もはや不要になったカルシウムを表面に排出すると考えられます。それが私たちの眼には美しい表面結晶として見える訳です。
キララホコリ
夏の終わり。苔むした倒木にオレンジ色の変形体を見つけました。
この段階では変形菌の種同定はできません。
私は3ヶ月間この変形体を見守りました。
八甲田山頂が銀世界になった10月中旬、ついにオレンジ色の未熟な子実体となり、数日でキララホコリとわかる姿に成熟しました。
子実体は表面にカルシウムを排出しながら、まるでアート作品のような模様を浮かび上がらせていきます。
やがて苔むした倒木は、華麗なる変身を遂げたキララホコリ達の美しいアート作品のギャラリーとなるのです。
文章・写真ご提供はこの方
引地 美喜子 さん
十和田奥入瀬・八甲田山麓をフィールドに、早春から晩秋まで変形菌を探して山野をかけ巡る自称変形菌ハンター