菌な人をご紹介[Autumn 2024]

   2025/02/02

世界には私たちが知らない、ふしぎな菌が数多く存在しています。
そんな菌を愛する変形菌ハンターによる、美しい世界をご紹介。

変形菌の住所

菌類の分類体系は大幅な見直しの途上にあります。代表はシイタケなどのきのこの担子菌とアオカビなどの子のう菌です。さて変形菌は変形体の時期には動物のように動きますが、最終的には「小さなきのこ」の子実体になるので、名前に菌がついています。しかし実は全く違う生物であり、菌類は様々な物質の分解にかかわっているのに対し、変形菌は分解者を捕食し、分解を遅らせる逆の働きをしているのではないかと考えられ始めました。

分子遺伝学に基づく真核生物の高次分類では、動物と菌類はオピストコンタという同じ分類に入りますが植物はアーケプラスチダ、そして変形菌はアメボゾアになります。「ヒトと菌類は兄弟で変形菌は従兄弟、植物は友達」と言ったら専門家に叱られるでしょうか。

ジクホコリ

初夏、足元の落ち葉の上で虹色に輝く美しいジクホコリに出会うことができます。変形菌愛好家のアイドル的存在です。大発生することが多く、落ち葉や生の草に這い上がります。純白の柄が見えると、見つけた! と歓声をあげてしまうほど毎年会いたい変形菌です。一度見つけると「ここにも、あっ!ここにも」と次々目に入ってきます。変形体の時には白色で、子実体は白から黒色となり、成熟すると美しい虹色の層に見える構造色になります。子実体に出会うと、美しい構造色が輝くまで2、3時間その場で待ちます。美しい変形菌に会うためには根気も必要なのです。

文章・写真ご提供はこの方

引地 美喜子 さん

十和田奥入瀬・八甲田山麓をフィールドに、早春から晩秋まで変形菌を探して山野をかけ巡る自称変形菌ハンター

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