菌な人をご紹介[Spring 2023]

   2024/01/17

世界には私たちが知らない、ふしぎな菌が数多く存在しています。
そんな菌を愛する変形菌ハンターによる、美しい世界をご紹介。

色はないのに美しい色に騙される謎

変形菌は美しい色彩で私たちを魅了します。カロチンを含んだ黄色など、色素による色彩も勿論あります。しかし私たちが見る多くの変形菌の色は、構造色と呼ばれるものです。シャボン玉は透明なのにカラフルに見えるのと同じです。薄膜干渉といわれる物理現象で、固有の色を持たないのに光の波長の差で私たちに美しい色を見せてくれます。玉虫色で有名なタマムシ、孔雀やハチドリの色と同じです。実は私たちは変形菌に騙されているのです。オパールは透明なのに大金を払うわけですが、私たちはお金も払わずに変形菌の美しさに魅了されています。美しい色を放っていることを変形菌は知っているのでしょうか。単なる偶然なのでしょうか。

コンテリルリホコリ

私のフィールドでシーズン最後に見つかるのがルリホコリの仲間、コンテリルリホコリ。これは構造色という金属的な光沢を放つ粘菌の代表格です。森の宝石とも形容されます。乳白色( 黄色の時も) の未熟な子実体から少しずつ色づいていき、成熟すると瑠璃色や紫、青緑などが混在した美しい構造色になります。 密集して発生するコンテリルリホコリは、まるでミクロの世界の小宇宙を見ているようです。その中でも特に青色に成熟したコンテリルリホコリを見ていると、「瑠璃色の地球」の歌詞が頭の中を駆け巡ります。

文章・写真ご提供はこの方

引地 美喜子 さん

十和田奥入瀬・八甲田山麓をフィールドに、早春から晩秋まで変形菌を探して山野をかけ巡る自称変形菌ハンター

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