菌な人をご紹介[Spring 2025]

世界には私たちが知らない、ふしぎな菌が数多く存在しています。
そんな菌を愛する変形菌ハンターによる、美しい世界をご紹介。
変形菌に知性はあるのでしょうか
知性とは、物事を知り(情報を収集)、考え(分析)、判断する(問題を解決)能力 のことです。ヒトの脳では膨大な数の細胞がネットワークを形成して知性を生み出しています。
さて変形菌は巨大な単細胞です。ですが迷路に置くと最短距離で餌に到達します。また他種の変形菌に触れると、失礼しましたとばかりに離れていき、視覚や嗅覚は無いのに餌に接近します。その驚くべき能力は、生物の知性を再考するきっかけを与えています。人間とは異なる形の知性を持っていると考えられるのです。
その知的な行動は生物の多様性を改めて感じさせてくれるものです。変形菌の知性に関する研究は始まったばかりであり、これから多くの謎が解明されていくことでしょう。
クビナガホコリ
夏のある日、変形菌が次々と発生する立ち枯れの木を眺めていたら、「えっ!?」と二度見してしまうような出会いがありました。クビナガホコリという変形菌です。変形菌の中でも極小で、春から秋に腐木や樹皮に普通に発生します。目視では見つけにくいので、他の変形菌を撮影した時に偶然映りこんでいることが殆どです。
それが立ち枯れの木全周にびっしりと発生していたのです。「この木にはいったいどのくらいの数のクビナガホコリがいるの?」そんなことを考えながら写真を撮りました。やはり世界は変形菌でいっぱいなのです。地球にいる生物の数は半端ないなあと、改めて思いました。
文章・写真ご提供はこの方

引地 美喜子 さん
十和田奥入瀬・八甲田山麓をフィールドに、早春から晩秋まで変形菌を探して山野をかけ巡る自称変形菌ハンター