菌な人をご紹介[Summer 2022]

   2023/05/14

世界には私たちが知らない、ふしぎな菌が数多く存在しています。
今回はそんな菌を愛する、変形菌ハンターをご紹介。

菌なのに菌ではない。変形菌って何者?

変形菌をご存じでしょうか。
以前は粘菌といわれましたが、最近は変形菌と呼ばれています。
粘菌は昭和天皇の研究テーマでした。
知の巨人・南方熊楠から講義を受けるために、天皇が軍艦で和歌山に立ち寄った話は有名です。
この時に熊楠の粘菌動物説と御用学者の植物説が衝突したそうです。

世界最大の単細胞生物で、落ち葉や倒木の上を這いまわり、突然高さ1~3mmのきのこに大変身します。
実は菌類ではなくて、アメーバの仲間ということが判ってきました。
そのきのこ(子実体)がとても美しくて、写真家の新井文彦さんが「粘菌生活のすすめ」という本を書いたくらいです。
実はこの美しい色の正体は、シャボン玉の虹色と同じ構造色です。それはまたの機会に。

根雪の下だけで生きる好雪性変形菌

さて今回はクダホコリをご紹介します。
春の日、朽ちて苔むした倒木にぼっと朱色の花が咲いているように見えたなら、それがクダホコリです。

3カ月以上も根雪の下だけで生きる変形菌がいます。
春になって根雪が溶ける直前、雪の下の笹や木の枝の上で子実体になります。
立ち上がった笹の葉などから、風に乗せて胞子を世界に振りまくのです。
極寒の地であれば変形菌の天敵トビムシなどがいません。
しかも厚い雪の下なら気温は零度前後に維持されているはずです。
生存して子孫を残す最善の選択だったのでしょう。
融雪期の森で好雪性変形菌を探し出して、陽を浴びて風に飛ばされる前に撮ったのが掲載した写真です。

文章・写真ご提供はこの方

引地 美喜子 さん

十和田奥入瀬・八甲田山麓をフィールドに、早春から晩秋まで変形菌を探して山野をかけ巡る自称変形菌ハンター

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