菌な人をご紹介[Winter 2023]
世界には私たちが知らない、ふしぎな菌が数多く存在しています。
そんな菌を愛する変形菌ハンターによる、美しい世界をご紹介。
変形菌は何を食べているの?
朽ち木などに生息する細菌類や菌類は変形菌にとっては主食です。アメーバ状に移動しながら栄養となる有機物を捕食して体内に取り込み消化します。細菌類や菌類は植物遺体や有機物の分解者です。変形菌はこれらを捕食することで分解の速度を遅くして生態系の循環に影響を及ぼしているのでは?ともいわれています。
藻類や酵母なども栄養源ですが、実は植物由来の有機物以外に、色々な動物性たんぱくも食べるのでは?と研究している方もいます。変形菌の種類によって好みも違います。ブドウフウセンホコリという種は、以前「キノコナカセホコリ」と言われていました。栽培なめこに大発生して生産者を困らせることもあるそうです。
ブドウフウセンホコリ
落葉広葉樹を中心としたブナの森には、秋になるとブナハリタケというキノコがでます。これがブドウフウセンホコリの大好物です。ブナハリタケの寿命は7~10日です。不思議なことに、ブナハリタケが出始めて数日で、すでにその根元には黄色いブドウフウセンホコリの変形体が付いているのです。どうやら、ブナハリタケの菌糸が育っている朽ち木の中には、すでにブドウフウセンホコリの変形体も同居しているらしいのです。虎視眈々とブナハリタケがキノコになるのを見張っていて、「でたぞ!」と追いかけてきて捕食しているのでしょうか。
文章・写真ご提供はこの方
引地 美喜子 さん
十和田奥入瀬・八甲田山麓をフィールドに、早春から晩秋まで変形菌を探して山野をかけ巡る自称変形菌ハンター