粘菌の世界~森の片隅の、小さな思考者たち[Winter 2025]

   2026/05/08

世界には私たちが知らない、ふしぎな菌が数多く存在しています。
そんな菌を愛する変形菌ハンターによる、美しい世界をご紹介。

変形菌は食べることができますか?

 変形菌に毒性が有るのか無いのかについては十分に研究されていません。安全性が確認されていないものを食べてはいけませんが、こっそり口にした人は一様に無味無臭であったといいます。

 美しい色から期待するような味ではなさそうです。メキシコの一部では、ススホコリやマンジュウドロホコリを「月の糞」と呼んで揚げて食べる習慣があるそうです。中国の土中から発見される肉質の塊はタイスイといって不老不死の仙薬として珍重されるそうですが、変形菌の巨大な菌核が種々の物質と融合した集合体ではないかと言われています。

 今のところ毒性の強いアオカビからペニシリンが抽出されたような、人間に有効な薬物が抽出されたこともありません。小さすぎて十分な検証ができていないのが実情と思われ、今後驚くべき物質が発見される可能性は無きにしも非ず、でしょうか。

ムラサキアミホコリ

 秋の森で倒木上に、藤色や紫色の小さな粒々がびっしりと肉眼で見えることあります。それはムラサキアミホコリかもしれません。朽木や苔の隙間に映える鮮やかな色合いは、まるで小さな宝石が散らばっているかのようです。

 ムラサキアミホコリの美しさは色の美しさだけではありません。胞子が飛散した後には、網状の美しい「カゴ」のような構造が残ります。それは、レースの様な繊細な網目模様を形成する精密な工芸品さながらなのです。ムラサキアミホコリは、森の奥でひっそりと自然の造形美を見せてくれる小さな芸術家達です。


引地 美喜子 さん

十和田奥入瀬・八甲田山麓をフィールドに、早春から晩秋まで変形菌を探して山野をかけ巡る自称変形菌ハンター

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