粘菌の世界~森の片隅の、小さな思考者たち[Autumn 2025]
世界には私たちが知らない、ふしぎな菌が数多く存在しています。
そんな菌を愛する変形菌ハンターによる、美しい世界をご紹介。



変形菌と生物多様性
変形菌は動物でも植物でもなくて強いて言えばアメーバの仲間です。数億年前から独自の進化を遂げてきた単細胞生物です。これまで約1000種が知られていますが、今後さらに増えていくでしょう。その生態系は深い森にだけある訳ではありません。
皆さんの庭に落ち葉があったら葉の表面をじっと眺めてみてください。不自然な黒い網目があったら、それは変形菌アメーバの這い跡です。それどころか動物の糞を好む種もあれば水の中で生活する種もいるのです。また遺伝子の多様性は進化に重要な役割を果たしますが、最近の研究でこれまで1種と思われていたマメホコリが、実は53種にも分類されることがわかったのです。
写真のシラタマウツボホコリは、栗のイガをみると高い頻度で見つかります。なぜ栗のイガの先端で子実体になるのでしょうか。変形菌の多様な不思議な生態を垣間見ることができます。
シラタマウツボホコリ
構造色の美しい変形菌や色素を持つ変形菌のような派手さはないけれども、清楚で可憐で可愛いらしいシラタマウツボホコリ。私のお気に入りの変形菌の一つです。
未熟な時にはやや透明感があり、プルンプルンのゼリーのようです。成熟するとうっすらクリーム色で、子嚢はまん丸で小さな真珠のようです。さらに成熟が進むと子嚢から細網体が飛び出し、胞子を散布して新たな生命のサイクルを始めます。落ち葉やブナの殻斗にも見られますが、栗のイガに特異的に発生しやすいことが知られています。
道端や森の中で栗のイガを見つけたら、そっとつまんで見てください。可愛らしいシラタマウツボホコリに出会えるかもしれませんよ。

引地 美喜子 さん
十和田奥入瀬・八甲田山麓をフィールドに、早春から晩秋まで変形菌を探して山野をかけ巡る自称変形菌ハンター


