粘菌とは?森で見つけた変形菌の種類と美しい写真まとめ|粘菌の世界
森を歩いていると、倒木の上や苔のすき間に、ほんの数ミリの小さな存在がひっそり現れることがあります。
きのこのようで、きのこではない。植物のようで、植物でもない。かつては「粘菌」と呼ばれ、今ではアメーバの仲間とされる変形菌。目立たないはずなのに、一度見つけてしまうと、どうにも気になって仕方がない。森の片隅で、こちらが気づくのを待っていたような、不思議な気配があります。
BioMediでは、そんな変形菌たちの姿を「粘菌の世界〜森の片隅の、小さな思考者たち」として季節ごとに紹介してきました。
このページでは、これまで登場した変形菌を種類ごとにまとめています。小さな図鑑をめくるように、森の中のふしぎな住人たちをお楽しみください。

粘菌とは?菌なのに、菌ではない小さな存在
粘菌という名前を聞くと、きのこやカビの仲間を想像するかもしれません。でも、現在「変形菌」と呼ばれるこれらの生きものは、菌類ではなくアメーバの仲間とされています。変形体の時期には、倒木や落ち葉の上をゆっくり移動し、細菌や菌類などを取り込みながら生きています。そして時がくると、まるできのこのような小さな子実体へと姿を変えます。
その大きさは、多くがほんの1〜3ミリほど。けれど、そこには構造色、胞子、移動、捕食、性の多様性、森の分解との関わりなど、驚くほど深い世界が詰まっています。
これまで紹介した変形菌たち
ここからは、過去の「粘菌の世界」に登場した変形菌を、特徴ごとに紹介します。
色が美しい変形菌
コンテリルリホコリ:瑠璃色、紫、青緑が混ざるように輝く、構造色の美しい変形菌。まるで森の中に落ちていた小さな宇宙のようで、「森の宝石」と呼びたくなる存在です。



ジクホコリ:落ち葉の上に現れ、成熟すると虹色の構造色を見せる変形菌。純白の柄と、黒から虹色へ変化する子実体の対比が美しく、愛好家にとっては出会うと嬉しいアイドル的存在です。

ムラサキアミホコリ:藤色や紫色の小さな粒が倒木上に並ぶ変形菌。胞子が飛んだあとに残る網状の構造は、まるで小さなレース細工。色の美しさだけでなく、構造の美しさも魅力です。



アカフクロホコリ:赤や緋色の変形体が印象的な変形菌。少しホラー感のある姿も、苔の上に現れると小さな灯りのようで、不思議な可愛らしさがあります。

形の変化が面白い変形菌
クダホコリ:鮮やかな赤いたらこのような姿から、オレンジ色の花のような子実体へ、さらに黒光りする姿へと変化する変形菌。1〜2cmほどになることもあり、変形菌の中では存在感のある種類です。

キララホコリ:オレンジ色の変形体から、カルシウムを表面に排出しながら、アート作品のような模様をつくる変形菌。長い時間をかけて姿を変えるところに、観察する楽しさがあります。

ハナホネホコリ:はじめは雪見だいふくのような淡い色合い、やがてチョコレート色へ変わり、最後には外壁が裂けて花のように反り返る変形菌。名前の通り、花びらのような姿が印象的です。

ホソエノヌカホコリ:朱色や橙色の未熟な子実体が美しく、数日以上そのゼリー状の姿を保つことがあります。成熟するとアフロヘアのような細網体が現れ、見た目の変化が楽しい種類です。

暮らす場所が面白い変形菌
シラタマウツボホコリ:栗のイガで見つかることが多い、白く可憐な変形菌。派手ではないけれど、清楚で愛らしい姿をしています。なぜ栗のイガの先端で子実体になるのか、その理由を考えたくなる存在です。



コケジクホコリ:苔むしたコンクリートの壁に現れる、直径0.5ミリほどの極小変形菌。黄色い子実体が苔の上に並ぶ姿は、まるで小さな果実のよう。色が変わると見つけにくくなるため、出会いはタイミング次第です。

キカミモジホコリ:黄色い頭にオレンジの柄を持つ、小さくて可愛い変形菌。腐木の上にびっしり群生する姿は、まさに「キカミモジホコリ祭り」。小さいのに、色の組み合わせでしっかり目を引きます。

カタホコリの仲間:春の落ち葉をそっとめくると、シロエノカタホコリ、ゴマシオカタホコリ、ヒメカタホコリ、クラカタホコリなど、さまざまな仲間が並んでいることがあります。葉っぱの裏は、小さな宝探しの場所です。



食べものの好みが面白い変形菌
ブドウフウセンホコリ:キノコを好む変形菌。ブナハリタケの根元に黄色い変形体が現れる様子は、森の中でこっそり食事をしているようです。以前は「キノコナカセホコリ」と呼ばれていたこともあるほど、キノコとの関係が印象的です。

希少さや質感が印象的な変形菌
ミヤザキロウホコリ:ロウのような物質をまとった、非常に希少な変形菌。黄土色、紫、濃紺が混じり、真珠光沢のある落ち着いた美しさがあります。派手ではないけれど、出会えたことそのものが記憶に残る存在です。



クビナガホコリ:極小で、肉眼では見つけにくい変形菌。腐木や樹皮に発生し、他の変形菌を撮影した時に偶然写り込んでいることも多いそうです。小さいけれど、世界の豊かさを感じさせてくれます。

特徴別に読む「粘菌の世界」
美しさで読むなら
構造色の美しさに惹かれるなら、コンテリルリホコリ、ジクホコリ、ムラサキアミホコリがおすすめです。色素そのものではなく、光の干渉によって瑠璃色や虹色に見える姿は、自然がつくる小さな工芸品のようです。
森の循環で読むなら
変形菌は、ただ美しいだけの存在ではありません。細菌類や菌類を捕食し、分解の速度にも関わっている可能性があると考えられています。ブドウフウセンホコリのようにキノコと関わる種類を見ていると、森の中で生きもの同士が静かに関係しあっていることが伝わってきます。
知性や動きで読むなら
変形菌は脳を持たない単細胞生物ですが、迷路の中で餌へ向かう、嫌なものから離れる、他の変形体と接触すると距離を取るなど、ただ反応しているだけとは言い切れないようなふるまいを見せます。「小さな思考者たち」という連載タイトルは、そんな不思議さによく似合います。
季節ごとに読むなら
粘菌の世界は、季節ごとに見え方が変わります。春は雪解けや落ち葉の下から現れる小さな命。夏は苔や倒木の湿り気の中に現れる鮮やかな色。秋はキノコや栗のイガなど、森の実りと一緒に出会う変形菌。冬は胞子や構造、食文化など、少し引いた視点でその不思議を眺める楽しさがあります。
小さな命を見つめることは、見えない世界を想像すること
粘菌、あるいは変形菌の面白さは、「こんな生きものがいたんだ」という驚きだけではありません。見ようとしなければ見えない場所に、ちゃんと世界が広がっていることを教えてくれるところにあります。
倒木の上、苔の間、落ち葉の裏。ほんの数ミリの小さな生命が、動き、食べ、形を変え、胞子を飛ばし、また次の森へつながっていく。私たちの目には静かな森に見えても、その内側では、たくさんの小さな営みが続いています。
BioMediが大切にしている「菌との共生」という考え方も、どこかこの世界と重なります。大きなものだけを見るのではなく、小さな存在に目を向けること。すぐに役に立つかどうかだけではなく、そこにある関係や循環を想像すること。
肌も、腸も、森も、ひとつの生態系です。
小さな命を知ることは、私たち自身のからだや暮らしを、少しだけやさしく見つめ直すことにつながるのかもしれません。
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この記事はビオメディ季刊誌で粘菌記事を連載いただいている引地 美喜子 先生の記事を元にビオメディ編集部でまとめた内容になります。

引地 美喜子 さん
十和田奥入瀬・八甲田山麓をフィールドに、早春から晩秋まで変形菌を探して山野をかけ巡る自称変形菌ハンター


